「あなたの間抜け面を見ていると、時々殺してやりたくなりますわ」
開口一番物騒な台詞を吐いた少女は不機嫌そうに顔を顰めたまま「ちょっと、聞いてますの」と口を尖らせる。
「聞いてるよ、ちゃんと」
「なら反応くらい示しなさいな。」
眇めた目から射殺しそうな視線を投げかけた少女は、その桃色の髪を掻き上げながら言った。
「殺すだなんて穏やかじゃないね。」
「それなら殴りたくなってくる、と言い換えてさしあげますわ。」
そのへらへらした顔を見ていると苛々するんですの。
ひどい言い草だなあと矢張り男はどこかのんびりした口調のまま。
「貴方、本当にわたくしの言ったことを理解しているんですの?」
ちっともそうとは思えないのですけれど、言えば「理解してるよ」と男は笑った。
「でもねえ、僕が笑っているのはいつものことだし、それにいちいち反応してたら疲れない?苛々してる時には甘いものがいいよ。チョコがあるんだけどいる?」
「結構ですわ。あなたの菓子など受け取りませんから。」
随分毛嫌いされているようだ、とレムレスはこっそり溜息をついた。
少女はついと視線を外した渋面のままだが、この場から一歩も動こうとはしない。
ここは動きが制限された教室でもないしここにいなければならない理由もないのに何故、という考えが過ぎって「それなら僕はここでお暇しようかな」自分が去ればいいことだと思い当たった。
「勝手になさいませ。」
彼女はこの場から動かない。
「ねえラフィーナ。」
「なんですの。」
矢張り少女はそっぽを向いたままだった。
「どうして僕のお菓子だけ嫌うのかな?」
彼女が学校帰りにクラスメイト達と甘味を食べて顔を綻ばせていたことを知っている。
「そんなに僕が嫌い?」
その言葉にばっと振り向いた少女は少しばかり驚いたように見開いた目をきゅうと細めて
何を言う暇もなく男の腹に蹴りをくらわせた。
たまらず腹を守るように折り曲げたその体に続けざまに二度、三度。
「ラフィーナ、何を・・・」
「お黙りなさい。」
苛立ちを暴力という形にして外に出す。
がつりと呆けたような顔を掴んで引き寄せて、思い切り顰め面をしてみせた。
軋んだ体も紫色を呈し始めた皮膚も、わたくしの同情を誘うにはまだ足りない。
「・・・あなたが全部悪いんですわ。」
そうやって誰にでもお菓子を配るから。
愛をばら撒くだなんてはしたないこと。
「全部、あなたのせいなのですから。」
罪には罰を。断罪者はわたくし。ですからわたくしは、少しも間違ってはいないのです。