「おやそこを行くのはアルルじゃないか」
「アルルちゃん、やほ〜★」
「りんご、まぐろくん?どうしたの」
「いやなにちょっと作戦会議をね」
「そうそう★」
二人はきゃっきゃうふふと何事かを話し合っている。仲がいいなあ、くらいにしかボクには思うことが出来ない。
あの年頃の男女があんなに仲が良くて友達同士なのは不自然なことなのだとか、お互いがお互いをどう思っているのだろうとか、そういった世間一般的な常識というものが脳内に存在していないことも一因しているけれど、それより何より二人が楽しそうだからそれでいいじゃないかの一言で片づけられた。
「だからりんごちゃん、りせぱ捕獲には囮が必要なんだよ。りせぱがそっちに気を取られているうちに背後からぐわっと!」
「SO・RE・DA!それだよささきまぐろくん」
捕食関係の逆転ですな!となんだか物騒なことをのたまっている。
「アルルはどう思う?」
「うわ!い、いきなりボクにふらないでよ」
実際りすくま先輩の捕まえ方なんてわからない。
「そもそも捕まえてどうするの?」
「思う存分もふるのだー★」
喜色満面なまぐろくんの横でりんごちゃんがうんうん頷いているので本当らしい。
しかし抱きつくだけならわざわざ捕まえなくてもよさそうなものだが、違うのだろうか。
「最近のりすせんぱいはもふられ拒否期間中なのです!これは私たちの精神健康維持に大変よろしくないのですよ!」
拳を握っての力説。手にしたりんごが潰れそうだ。
「そ、そうなんだ」
正直よくわからない世界である。
ボクには理解不能だなあ、まあ楽しそうだからいいかと現実逃避ぎみの思考をあらぬ方向へ放り投げていると
「ちょっと失礼」
「ふわあ!?」
真正面から思いっきり抱き締められて裏返った声が出た。
「り、りんご?」
突然の展開についていけない。そうでなくてもすずらん商店街三人組は行動が突飛で掴み辛いのだ。
恥ずかしさで熱を持つ顔をなんとか冷やそうと必死になっている間も、りんごの抱き締め攻撃は続いている。
「むむむ!意外とありますなアルルさん」
「うわ、ちょりんごストップストップ!エコロでも乗り移ってるんじゃないの」
あらぬ場所に顔を埋められて流石にストップをかけた。しかし当の本人といえばいたって真剣な顔で次のようなことをのたまっている。
「失敬な!りすせんぱいと他の人の抱き心地を比べてみただけだよ」
比較対象にはならないんじゃないかな、とごにょごにょ呟いてみるも受け入れられる気配はない。
こちとら至って普通の人間で、毛だらけでもこもこふわふわなあのダンディズムくまと比べられても困るのだ。
ひとしきり堪能されたところで最終的に右側からしがみつかれて、満足したような顔をしたりんごは少し離れた場所で眺めていたまぐろくんに声をかけた。
「ほれささきまぐろくんも!」
「あいあいさ〜★」
「す、スキンシップ過剰じゃないかな二人とも」
両側から挟みこまれるように抱きつかれておそるおそる訴えるも、全く堪えた様子はない。
むしろにこにこして以下のようにのたまった。
「いーんだよ、だって」
「うんうん」
きみのことが大好きだから!
真顔でセクハラ二人組
(あ、一番はりすせんぱいだけどね!)(知ってるよ)
(それに今日誕生日らしいじゃん)(そうだけど)
(これがプレゼントってことで!)(誰か助けてー)