だいすきよ、真っ赤な瞳の彼女が笑う。
だいすきよ、だいすき。
くすくすという笑い声は鏡の中で飽和して、しゃぼん玉みたいにぱちぱち消えていった。
どうして?
確固とした声が飴色の瞳の彼女から放たれる。
どうしてキミはボクのことを好きだと言うの?
不思議そうな声が真っ暗な箱の中でことりと落ちた。
ボクはキミだから。真っ赤が言う。
キミだってボクでしょう?瞳の色しか違わない、瞳の色以外全て同じ。
それに飴色はふるりと首を振ってキミはキミだし、ボクはボクだ。繰り返された言葉を零した。
ほんとうに?
本当さ。
それに真っ赤な瞳はにんまり笑ってウソツキ、と言い放った。
ボクは、キミだよアルル。キミが望んで作りだしたキミ自身。
だからボクはキミのことが好き。心から好き。キミしか愛さないし、キミ以外はどうでもいい。
すらりと白い腕が伸ばされてびくりと身を引くも、あっさりと囚われてしまう。
だって、ねえアルル。思いだして、ようく考えて。キミが本当に大切に想っているのはだあれ?
キミを置いて行ったお父さん?
違う。探し出したいけれど、でも少し怖い。
キミを送りだしたお母さん?
今どうしているかも知らないのに。
キミの友達のカーバンクル?
それも、違う。カーくんは一人でもなんとかるくらい強いから。
ライバルのルルー?
傷つくところを見るのは嫌だけど、でも大切な人じゃない。
キミを后だと言い張るサタン?
あんなにも強い人をどうしてボクなんかが大切に出来るっていうの。
キミが少し気になってるシェゾ?
恋にもならない脆弱な感情で、大切だなんて言えやしない。
じゃあ、誰?
キミが本当に大切にしているのは誰?
真っ赤な瞳がボクを覗き込んで、赤に染まったボクを見る。
ああ、ボクが一番大切だったのは。
「ボク自身・・・」
にこりと笑った彼女はせいかい、と唇を歪めて、大好きだよアルル、この世の誰よりも。と言った。







ハロー・ナルシズム