素直すぎて嫌になる、と彼女は言った。
お前が欲しい、だなんてそれなんて欲望の発露。しかも何人にもさ。いい加減、ボクだって頭にきてもおかしくないんだよねとそっぽを向いた。
しかもそれがさ、ただの女好きとかならまあまだ許せる。え?無理?いやいやまだましだよ最初から好きにならずに済んだんだもの。
あいつの場合は本当に自分を高めるために言ってるだけで(要は力が欲しいとか能力が欲しいとか)だからちっともその言葉の意味を理解していない。・・・長年人間とろくに喋ってなかったっていうのもあるんだろうけど、それを差っ引いたってあれはない。
最初はどこのナンパ男かと思ったもん。
目の前にいきなり現れて「お前の全てが欲しいだけだ」なんて言われてみなよ、一発でやばい人だって判るから。
倒しても倒しても追いかけてくるし、息の根止めてやろうかと思ったこともある。でもね―ああ慣れって怖いね、ボクは彼が追いかけてくるのが普通になっちゃって。で、「欲しい」なんて言われるのにもさっぱり動悸すら起こさなくなったんだよ。
だけどね、どうだろう!暫く離れてた間にあいつ、誰にでも欲しい欲しい言うようになっちゃって!
そうなると今度はなんだか不愉快なんだよね、ん?我侭だって?女の子はいつだって我侭なんだよ。
ボクがいなかったから欲求不満だとでも?知らないよそんなの!
腹が立ったから今度会った時は絶対言ってやるんだ「キミが欲しい!」ってさ。恋する女の子に勝てる奴なんて、世界のどこにも存在しないんだから。
そうじゃなくてもあいつはボクに一度も勝てたためしがないしねと快活に笑って彼女は遠くを見た。
話題の渦中の人物がのこのこ歩いているのを、獲物を見つけた狩人みたいににんまり笑ってじゃ、そういうことで!と駆け出して一喝。
「お前が」「キミが」「「欲しい!」」
ああまったく二人とも素直だこと。






を掲げる日
(青い春ってこういうことかもね)(遠い目をしてますわねアミティさん)